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釧路家庭裁判所 昭和36年(家)82号 審判 1961年4月17日

申立人 大山頼夫

主文

本件申立を却下する。

理由

本件申立の要旨は、「申立人は、宗教法人神道管長より文部大臣認証の神道規則第五三条により訓導に補され、教名「彰繕」を授けられたので、申立人の名「頼夫」を「彰善」と変更することの許可を求める。」というのである。

しかしながら、家庭裁判所調査官の報告書によれば、申立人は昭和三〇年頃から土木建築請負業を営んでいるが、従業員には犯罪の前歴を有するものが多く、これ等の者の改化更生のため心のよりどころとして信仰に入つたこと、そして宗教の中で特に神道を選んだのは元来敬神の念をもつていたところ、昭和三五年三月神道の小池信儀権大教正が釧路を訪れた折、その予言がよく当ると聞いて同人に会つてから心服し神道に帰依するに至つたこと、その後神道管長より教名「彰繕」で訓導の資格を授与されたこと、しかしながら申立人は単に神道を神仰するに至つたというだけで、その教義、儀式の習得その他の修業研修を受けたことは一度もないばかりでなく、将来も布教師として一般民衆に接して布教を行い、社会的職業的宗教活動を行う意思はなく、従つて申立人は宗教家として社会生活をなしている事実もなければ、その意思もないことを認めることができ、かような事実関係の下においてはたまたま教名を、授与されたからといつて申立人の名を教名に変更すべき正当の事由があるものとは到底認められない。よつて本件申立はこれを却下すべく、主文の通り審判する。

(家事審判官 石松竹雄)

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